映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の主人公ジャックが、初めて「クリスマス」に出会った衝撃の瞬間を再体験しましょう。
この記事では、死者の町の王がなぜ「色」や「温もり」にこれほどまで圧倒されたのか、その心理描写を歌詞から深く読み解きます。
読み終える頃には、当たり前だと思っていたクリスマスの光景が、ジャックの目を通した「奇跡」のように輝いて見えるはずです。

結論:空虚な心を満たしたのは、未知なる「光」と「幸福」への渇望

ハロウィンタウンの王として「恐怖」を極めたジャックが、自分に欠けていた「心の平穏」を見つける物語の転換点です。

この曲「What's This?」は、単なる驚きを歌った曲ではありません。それは、「恐ろしいもの」しか存在しない世界で生きてきた孤独な魂が、初めて「愛すべきもの」に触れた時の魂の叫びです。ジャックが感じた「骨の髄まで温まる感覚」は、彼が長年抱えていた内なる空虚さが、クリスマスの持つ無垢な喜びによって満たされていく過程を象徴しています。


Danny Elfman - What's This? (From "The Nightmare Before Christmas")

異世界への扉が開く時:物語としての楽曲解説

暗闇の世界から光り輝くクリスマスタウンへ。ジャックが体験した「センス・オブ・ワンダー」の正体に迫ります。

不気味な骸骨のような姿のジャックにとって、クリスマスタウンの全ては「常識の外」にありました。雪を「白い浮遊物」と呼び、子供たちが「頭を投げ合わない」ことに驚愕する。このコミカルながらも切実なギャップこそが、ダニー・エルフマンによる独創的なメロディと相まって、聴く者を一気に物語の世界へと引き込みます。彼はここで、支配者としての責任から解放され、純粋な好奇心を持つ一人の子供のような輝きを取り戻しているのです。

驚きと発見の連鎖:情熱を込めた歌詞と和訳

ジャックの目を通して描かれる、美しくも奇妙な「クリスマスの真実」を、臨場感あふれる言葉で綴ります。

[Verse 1]
What's this? What's this?
There's color everywhere
What's this?
There's white things in the air
What's this?
I can't believe my eyes, I must be dreaming
Wake up, Jack, this isn't fair! What's this?

[和訳]
これは何だ? いったい何なんだ?
どこを見渡しても、鮮やかな色に溢れているぞ
これは何だ? 空から白い欠片が舞い降りてくる
これは何だ? 自分の目が信じられない、きっと夢を見ているに違いない
目を覚ませ、ジャック! こんなことがあっていいのか? これは何なんだ!

[Verse 2]
What's this? What's this?
There's something very wrong
What's this?
There's people singing songs
What's this?
The streets are lined with little creatures laughing
Everybody seems so happy
Have I possibly gone daffy? What's this?

[和訳]
これは何だ? どこか決定的に「おかしい」ぞ(僕の知る世界とは大違いだ)
これは何だ? 人々が(叫び声ではなく)歌を歌っている
これは何だ? 通りには小さな生き物たちが笑いながら並んでいるじゃないか
誰も彼もが、あんなに幸せそうに見える
まさか、僕の頭が狂ってしまったのか? これは何なんだ?

[Verse 3]
There's children throwing snowballs instead of throwing heads
They're busy building toys and absolutely no one's dead
There's frost on every window, oh, I can't believe my eyes
And in my bones I feel the warmth that's coming from inside

[和訳]
子供たちが雪玉を投げ合っているぞ、誰かの生首を投げる代わりにね!
みんなおもちゃを作るのに夢中で、死んでいる者なんて一人もいないんだ
どの窓にも美しい霜が降りている。ああ、この光景が信じられないよ
そして、僕の「骨」の髄まで、内側から溢れ出す温もりを感じるんだ

[Verse 4]
The monsters are all missing and the nightmares can't be found
And in their place there seems to be good feeling all around
Instead of screams, I swear I can hear music in the air
The smell of cakes and pies are absolutely everywhere

[和訳]
恐ろしいモンスターはどこにもいないし、悪夢の影も見当たらない
その代わりに、心地よい幸福感がそこら中に漂っているみたいだ
悲鳴の代わりに、誓ってもいい、空からは音楽が聞こえてくるんだよ
焼きたてのケーキやパイの甘い香りが、街の隅々まで満たしているんだ

[Outro]
I've never felt so good before, this empty place inside of me is filling up
I simply cannot get enough, I want it, oh, I want it
Oh, I want it for my own! I've got to know, I've got to know
What is this place that I have found? WHAT IS THIS?!

[和訳]
こんなに晴れやかな気分は初めてだ。僕の中の空っぽだった場所が満たされていく
もっと知りたい、どうしても手に入れたい。ああ、これが必要なんだ
そうだ、これを僕のものにしたいんだ! 突き止めなきゃ、知る必要があるんだ
僕が見つけたこの場所は、いったい何なんだ? これは何なんだ!?

→Fall Out Boy「What’s This?」歌詞和訳と意味を解説!映画『ナイトメアー』の劇中歌をフォール・アウト・ボーイがカバー

言葉の裏側に隠された真実:キーワード解説

ハロウィンの住人であるジャック独自の視点が現れた、象徴的なフレーズを解説します。

  • In my bones:ジャックが骸骨であることを踏まえた言葉遊びですが、同時に「魂の奥底から」という深い実感を強調しています。
  • Instead of throwing heads:ハロウィンタウンでの「日常(首を投げる遊び)」との対比。クリスマスの無害で平和な性質を、ジャックなりの驚きで表現しています。
  • Empty place inside of me:ジャックが抱えていた「王としての孤独」や「退屈」。それが「意味のある何か」で埋まっていく感覚を描写しています。
  • Absolutely no one's dead:死者が主役の町から来た彼にとって、「全員が生きている」こと自体が最大のミステリーであり、奇跡なのです。
  • This isn't fair:直訳は「公平じゃない」ですが、ここでは「こんな素敵なことがあっていいのか!(ずるいほど素晴らしい)」という羨望の混じった感嘆です。

表現を支える語彙力:英単語解説

ジャックの混乱と興奮を伝えるために選ばれた、特徴的な単語たちです。

  • Daffy:【形容詞】(古風な表現で)頭がおかしい、狂っている。
  • Frost:【名詞】霜。クリスマスの冷たくも美しい質感を象徴する言葉。
  • Mistletoe:【名詞】ヤドリギ。その下でキスをする習慣があるクリスマスの象徴。
  • Queer:【形容詞】奇妙な、風変わりな。ジャックにとっては新鮮な驚きを指します。
  • Ensnare:【動詞】罠にかける、誘惑する。ハロウィン的な恐怖の動作。
  • Cozy:【形容詞】居心地がよい、暖かくて気持ちよい。
  • Ghouls:【名詞】グール、食屍鬼。彼にとっては馴染み深い存在。
  • Lined with:【熟語】~が並んでいる、~で埋め尽くされている。

曲の骨組みを知る:英文法解説

矢継ぎ早に繰り出される質問と感嘆。ジャックの興奮を支える構文を分析します。

  • What's this?:【疑問文】曲全体を支配するリフレイン。絶え間ない問いかけが、彼の抑えきれない好奇心を視覚化しています。
  • I must be dreaming:【助動詞 must】「~に違いない」という強い推量。現実を受け入れられないほどの衝撃を表します。
  • There's something very wrong:【存在文】直訳すれば「何かがひどく間違っている」。彼にとって「良すぎる状況」が異常事態であるという逆説的な表現です。
  • Could it be I got my wish?:【助動詞 could】「もしかして~だろうか?」という淡い期待。彼が心の奥で変化を求めていたことを示唆します。
  • Correct me if I'm wrong:【慣用表現】「もし僕が間違っていたら正してくれ」。あまりの未知との遭遇に、自分の認識を疑っている様子。
  • I've never felt so good before:【現在完了形(経験)】「今まで一度もこんな気分になったことがない」。人生を根底から覆す体験であることを強調。
  • Filling up / Get enough:【句動詞】満たされる、満足する。内面的な空虚さと、それに対する強い渇望を対比させる動きのある表現。
  • I've got to know:【義務の強調】have to よりも口語的で切迫した「知らなきゃいけないんだ!」という強い動機。

同じ熱狂を分かち合う:心躍るおすすめの楽曲

「What's This?」のように、「未知の世界に触れた衝撃」や「自分を変えたいという渇望」を感じるあなたへ。

1. Part of Your World (from The Little Mermaid)
「ここではないどこか」を夢見て、未知の陸の世界に憧れるアリエルの心情。ジャックがクリスマスタウンに見出した「憧れ」と深く共鳴します。

2. Reflection (from Mulan)
「本当の自分は何者なのか」という問い。ジャックがハロウィンの王という役割に疑問を感じ、新しい自分を探そうとする心の旅路と重なります。

3. A Whole New World (from Aladdin)
文字通り「全く新しい世界」を目の当たりにした時の驚きと解放感。視界が開け、世界が輝き出すあの魔法のような感覚を共有できる名曲です。

映画サントラ『The Nightmare Before Christmas (Original Motion Picture Soundtrack)』(1993)収録曲リスト(歌詞があるものだけ抜粋)

  1. Opening (The Nightmare Before Christmas)
  2. This Is Halloween
  3. Jack’s Lament
  4. What’s This?
  5. Town Meeting Song
  6. Jack’s Obsession
  7. Kidnap the Sandy Claws
  8. Making Christmas
  9. Oogie Boogie’s Song
  10. Sally’s Song
  11. Poor Jack
  12. Finale / Reprise
  13. Closing